魔術師は急いで少女の元へ帰ります。
少女はきっと魔術師を待ちわびているだろうし、魔術師もまた、かつての少女を取り戻せるのだと思えば、胸が逸るように思われました。
――なのにその足取りは、不思議と重く、鈍いものでした。
魔術師は花園へ帰る道すがら、少女と過ごした日々を思い返します。
魔術師が好んだ「少女自身」と、共に過ごした「少女の影」は、まったく違う顔をしていたと、魔術師は思います。
少女は魔術師に恋をしていました。ですから魔術師の一挙一動に翻弄されて、その都度くるくると表情を変えておりました。
真っ赤に熟れた頬は触れると熱く、魔術師はその熱と感触を、何だかとても気に入っていたのでした。
一方で、花園の少女はよく笑います。
また、少々意地っ張りだった「少女自身」と違って、とても素直で純粋でした。
恋など知らない無垢な心は、ただ無邪気に与えられるだけの日々を繰り返し、届かない苦しみも失う痛みも無く、花のような笑みを振りまくのでした。
どっちだって良かったのか、どっちもが良いのか。魔術師には分かりません。
魔術師が恋をしたのは少女自身に他なりません。
けれども恋を自覚したのは、花園の少女と過ごした時間があったからです。
彼は、どちらも美しいと思っていました。
いや。どちらかを選ぶ、とか、そういうことじゃない。
答えはもう出ています。
魔術師は、世界の中に在る少女をこそ、求めているのですから。
少女はきっと魔術師を待ちわびているだろうし、魔術師もまた、かつての少女を取り戻せるのだと思えば、胸が逸るように思われました。
――なのにその足取りは、不思議と重く、鈍いものでした。
魔術師は花園へ帰る道すがら、少女と過ごした日々を思い返します。
魔術師が好んだ「少女自身」と、共に過ごした「少女の影」は、まったく違う顔をしていたと、魔術師は思います。
少女は魔術師に恋をしていました。ですから魔術師の一挙一動に翻弄されて、その都度くるくると表情を変えておりました。
真っ赤に熟れた頬は触れると熱く、魔術師はその熱と感触を、何だかとても気に入っていたのでした。
一方で、花園の少女はよく笑います。
また、少々意地っ張りだった「少女自身」と違って、とても素直で純粋でした。
恋など知らない無垢な心は、ただ無邪気に与えられるだけの日々を繰り返し、届かない苦しみも失う痛みも無く、花のような笑みを振りまくのでした。
どっちだって良かったのか、どっちもが良いのか。魔術師には分かりません。
魔術師が恋をしたのは少女自身に他なりません。
けれども恋を自覚したのは、花園の少女と過ごした時間があったからです。
彼は、どちらも美しいと思っていました。
いや。どちらかを選ぶ、とか、そういうことじゃない。
答えはもう出ています。
魔術師は、世界の中に在る少女をこそ、求めているのですから。