少女の心は摩耗していました。
その心の内には、おそろしい呪いが渦巻いていたのです。

それらは少女の旅路で得た奇跡の代償でした。

彼は嘆きました。

こんなに痛がって、かわいそうに。
ああ、こんなものは彼女に相応しくない。

だいじょうぶ。もう痛くないようにしてあげる。
だから泣かないで。

そうして彼は、渦巻く呪いを食べ始めました。
彼女がもう泣かなくて済むように、痛くないように。

呪いが身の内を焼こうとも、彼はへっちゃらでした。
何故なら彼は姿を持たないものですから、どんなに身体がおかしくなっても、痛いとか苦しいとか、感じることはないのです。

何も感じられない彼には、分からなかったのです。

彼には「自分」がありませんでした。
彼は人を求めていましたが、それだけでした。

いつの間にか、自分と彼女の違いが、境が、彼には分からなくなってしまっていました。

呪いは彼自身を蝕み、やがて彼は少女の心を欲しました。

痛いと嘆く彼女が哀れで、それでも笑っている姿が、美しかったから。
――あの日。笑って、手を差し伸べてくれたから。

彼はただ、少女に恋をした、それだけだったのです。

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