五章 夢魔も十八、紅茶も出花

子供のマーリンに惑わされたかどうかは置いておいて、マーリンが十八歳になった

十八歳ともなると、もう大人のマーリンとそんなに違いはない。
とは言えまだ顔は多少あどけないし、髪も見知った長さには届かないけど、身長なんかはだいぶ元の大きさに近づいてきていた。

「ここらではっきりさせておこうと思うんだ」

リビングのソファで隣り合う私に、マーリンが徐に言った。
何だろうと首を傾げる私をじっと見つめると、「キミに言っても意味は薄いだろうけど」と前置きして、話し始める。

「キミの認識では私は若返っている、んだよね」
「うん。だってつい最近まで大人のマーリンと一緒に過ごしてたのが、突然朝になったら赤ちゃんになってて……成長したときも、そのまま目の前の景色が一瞬歪んだと思ったらマーリンが大きくなって……だからだんだん元に戻ってるんだと思ってたんだけど」
「景色が歪んだ、ね」

ふむ、と何かに頷きながらマーリンが少し考えるような素振りをする。
すぐに私をもう一度見つめると「それは多分違うと思う」と言った。

「違う?」
「そう……私もキミの前に現れるときはこちらの服を着ていたし、キミの反応から自覚は無いが大人の私が若返っているものかと思っていたんだけど。自室を工房に改造しただろう?アレは自身に何が起きているのかを調べる為に作ったんだ。詳しい説明は省くが、まぁここのモノを持ち帰れるかどうかの実験だね」
「持ち帰れたの?」

私の質問に、マーリンは首を横に振る。

「持ち帰れなかった。一つを除いて」
「ひとつ?」
「キミから貰った魔力だよ。キミと魔力供給したかったのは、それが理由でもあったのさ」

必要だって言ったろう?と問われて、よ~く思い返してみればそんなことも言っていた、ような気もする。
そういう理由があったなら言ってよ。

魔力をあげたというか、奪われたに近いと思うけど、まぁそれは良い。
あれが魔力供給だということすら、後から言われて知ったんだけどね!

あまり思い返したくない出来事なので、脳内に蘇った記憶を振り払ってマーリンに返事する。

「つまり……マーリンは今のマーリンが若返っているわけじゃなくて……」
「キミにとって過去の私が、私にとっての未来に時間移動していると解釈するのが自然だろう」
「じ、時間移動ってそんな簡単に出来るの?」
「出来るわけはないよね」

ないのか。魔術ってすげ~とか思ったら普通に否定されてしまった。

「時間移動に関しては今の時代でも魔法クラスの大偉業だろう。それが何で、私個人の身にこんな形で現れたのかは今もって分からない、というのが実情だ。有り体に言ってこれ以上はお手上げということさ」
「タイムスリップしてる以上のことは何も分かりませんでした、ってことね」
「……まぁそういうこと。苦労して工房作ったのになぁ。私にしては頑張ったと思うんだが」

やれやれ、と息を吐くとマーリンが私の肩にぼすりと頭を置いてくる。
何だこの甘えん坊め。どきっとしちゃったじゃないか。

最早大人のマーリンとそう変わらない体格の、ギリギリ少年なマーリンにそういうことをされると、どう反応していいものか迷ってしまう。
私は大人のマーリンの恋人だけど、このマーリンは年下であり、私に告白をしたマーリンとは違うのだ。
だってまだ私たちが出会ってない頃の……、とそこまで考えて、はたと気づいた。

マーリンと私は過去に出会っている。
私には、その記憶は無い。
そしてマーリンは若返ったわけではなく過去のマーリンが現在に来ているらしい。
現在のマーリンがどこに行ってしまったのかは分からないけど、ということはつまり、マーリンが過去に会っていた私というのは、今こうしている私のことなのではないか。

あれ、ということは……、少年マーリンも、私を好いていてくれてるということなのだろうか?

そうした思考に思い至って、余計にドギマギしてしまう。
そんな私に気づいたのか、マーリンがちらりと私の顔を見ると、くつくつと喉奥で笑った。人の顔を見て笑うんじゃない。

「あー、現在のマーリンはどこに行ったんだと思う?ちゃんと帰ってくるかな」

戸惑いを押し隠すように言う。けど、これは本当に心配だった。
入れ替わっているだけなら良いんだけど、もしそうだったらマーリンの過去に大人のマーリンが出現しているわけで、そういった痕跡があるなら少年のマーリンも気づくだろう。

「私が元の時代に帰るとき、向こうでは殆ど時間の経過はない。だからそもそも手がかりが薄いんだが、それでも未来の私は一度これを経験しているわけで、入れ替わっているんだとしたら何とかして痕跡を残すんじゃないかな?それが無いってことは、入れ替わっているのではないんだろうね。原因が分からないことには確かめようもない、とだけ言っておこう」
「……無事か分からないってことだよね」
「相変わらず心配性だね。平気だよ、そう簡単には死なないさ。大方誰かの恨みでも買って逃走中ってとこじゃないかな」
「恨みを買うような性格だって自覚があるのに直せなかったんだね」
「これでも恨まれるよりは尊敬される方が圧倒的に多いんだよ?」

その年で?凄いな。

……まぁ、人を惹きつける何かがマーリンにはある。確かに。
あの問答無用で理性を蕩かせる雰囲気然り、そうでなくても何らかのカリスマめいたものを感じるのだ。
だからこそ、余計に恨みも買ってしまうんだろうな。

「それにね、」マーリンが身を起こしながらそっと呟く。私は横目でその様子を見つめる。

「キミは知らないだろうけど、私ってとっても凄い魔術師なんだよ?」

悪戯っぽく笑って、マーリンは私の頬にちゅっと音を立てて口づけた。

「だから本当に心配はいらないよ。考えたってキミに解決出来る問題じゃないし、それならそんな心配はするだけ無意味だ。もっと明るいことを考えよう。ハッピーになれることでもする?私、とっても良い方法を知ってるんだけど」

耳元でマーリンが艶っぽく囁く。
だから、もう、本当こいつ……。

肘でマーリンを押し返しながら、横目で睨みつける。
マーリンは思った通り、何が楽しいのかニコニコした顔で私を見つめていた。
本当、心配するだけ無駄だなって思わせられるのがムカつく。

「心配くらいしても良いじゃん」
「私だって未来でどうなっちゃうんだろって困ってはいるんだよ?でも多分、何とでもなるだろうって思うし、仮に何ともならなくっても、まぁそれはそれ」
「諦めが良すぎない?」
「諦めてなんかないさ、私は未来に希望を持ってるんだから」

心外だ、とばかりに眉を吊り上げてマーリンが言った。

未来に希望……何だろう、詐欺の香りがする。

はぁとため息を吐き出し、脱力してソファにもたれかかる。
待ってましたとばかりにマーリンが伸し掛かってきたので片眉を吊り上げて睨みつけてみたものの、案の定柳に風だった。

「やめなさい」
「やだ♡」

何だその語尾のハートは。

「私にとっては久しぶりなんだよ?キミとこうして過ごすのは。だから甘えちゃうんだ。ほら私ってば甘えん坊だし?ね、姉さん」
「すらすらとよくもまぁ適当な台詞を……ほんとどこでこんな風になったの?小さい頃はそれはもうすっっっごく良い子だったのに」
「やだな、今も良い子だよ。優秀で爽やかで超美形の、一流の魔術師だ」

自分で言うか?

「出来のいい子って意味じゃなくてだな……ってこら!やめなさいってば!」

ぎゅうぎゅう抱き着いてキスしてこようとするマーリンの顔を避けながら言ってやる。
だけど人が話してるそばからマーリンが顔を寄せてくるのでどうしようもない。

「もう子供でもないし、良いじゃないか。キミ私のこと好きなんだし」
「……そういうマーリンは、何で私に迫ってくるの?」
「ん?……好きだから?」

にこにこ。マーリンは変わらぬ笑顔でさらりと告げる。

先刻その可能性に思い至ってドキドキしてしまっていた私だけど、でもその顔は……私を好きだと言ってくれた、大人のマーリンのものとは違うと感じた。
そもそも何で疑問形なんだ。

「うそつき」
「うーん?難しいなぁ。どう言ったらよかった?えーと……こうかな。――好きだよ」

うってかわって真剣な顔でマーリンが言う。

「……うん。それっぽいけど、でもそれ、本気じゃないよね」
「うん」

うんじゃないよ。

「ドキドキした?」

マーリンがにやりと意地悪気に笑いながら問いかける。
私はむっつりとした顔で目を細め、はぁとため息を吐いた。

「あのさ……からかってる?」
「一応、本気で口説いてるつもりだけど」
「一応なのに本気ってどういうこと」
「だってキミ、もう既に私のこと好きじゃないか。それに……」

言いながらマーリンがふと目を細めて私を見た。
――あ、やばい。

「だ――だめ!」
「おっと」

咄嗟に掌でマーリンの目を覆い隠す。
ダメだ、あの目で見られたら、私はたちまち何もかもどうでもよくなってしまう。

そっとマーリンが私の手を掴むと、思いのほか強い力でどかされる。
不敵に微笑むマーリンと目が合って、かっと顔に熱が走り、動悸が高まる。

「ふふ。なかなか頑張るね」
「な、なにが」
「キミって少しつついたらすぐ私に尻尾を振るから、もっと簡単かと思ってたのに」
「し、尻尾なんて振ってません!」
「自覚無いのかい?」
「甘やかしすぎただけです」
「何で敬語?」

マーリンがおかしそうに笑う。別に、敬語に意味なんてない。勢いそうなっただけのことだ。

一通りからかって満足したのか、マーリンがすっと顔を離す。
途端にぐらぐらと頭を支配していた熱が遠ざかって、私はほっと息を吐いた。

本当、何なんだろうコレ。
大人のマーリンに、ここまでの衝動を抱いたことなんて無い筈、なんだけど……。

困惑する私をよそに、マーリンは楽し気にしている。
私の手を取り指を絡めながら、歌うように語り出した。

「確かにキミは私に甘かった。とっても。あ、別に責めてるわけじゃないよ。褒めてもないけどね。誰にどう扱われようが、私はこういうものだから気にしなくていい」
「何それ、どういう意味?」
「甘やかされようが、厳しくされようが、私は私のまま、何も変わらないってことさ」

マーリンが、私の指の感触を楽しむように目をつむる。
ふにふにと指先を弄ばれて、何だかこそばゆい感覚が襲ってくる。

「小さいとき、全然笑わなかったのは……」
「あれは笑い方を知らなかっただけ。今は覚えたから笑えるけど、中身は変わってないよ」
「……昔と違って女の子に興味津々のくせに」
「あぁ、それは確かに。だって楽しいからさ」

からからとマーリンが笑う。

「子供の頃はね、知らなかったんだ。でもそう、確かにそれはキミが教えてくれた。女の子をいじるのは楽しい」

輝く笑顔で放たれた言葉に、私は言葉をなくしてマーリンを見つめた。
……え?マーリンの女好きって私のせいなの?

「あ、別にキミのせいでこうなったわけじゃないよ。私はそういう類の男で、たまたまキミが近くにいただけだから」

何も言わないうちから、マーリンが私の疑念を否定した。良かったと言うべきなのだろうか。

「じゃあマーリンは元来チャラいってこと?あんなに真面目だったのに……」
「せめて軽いって言ってほしいかなぁ」

それもどうなんだ。
いや、重さを感じさせないという意味では、マーリンは確かに軽い……し、所謂ナンパなやつという意味でも軽いので間違ってないけど。

「この性格は……女の子と仲良くなるのにこれが最適だっただけだよ。現にキミも、好きだろう。私のこういう性格」
「滅茶苦茶ムカつくことも多いけど」
「素直じゃないね」

ふふ、とマーリンが笑んで言う。やかましい。

「……じゃあ、その性格は、作ってるの?」
「うん」

あっさりとマーリンが頷いた。

「上手いだろう?」

にこやかに笑んでマーリンが言う。
何も返すことが出来ず、私は黙ってマーリンを見つめた。

「キミの恋人の「マーリン」は、よほど上手に演じていたんだね」

マーリンが私の髪に手を差し込んで、さらりと指先で弄ぶ。

「演……じ?」
「だって、本気で信じてたんだろう?私がキミを愛していると。私も頑張ってるんだけど、結構女の子を怒らせてしまうことも多くてね」

経験値の差かなぁ。マーリンがぼやくようにそう呟く。

「…………、……」
「あ、ごめん。傷つけた」

黙りこくる私に、悪いと思っていない声でマーリンが言った。

「……生意気な、子供の言いそうなことだよね」
「そう思う?」

苦し紛れに吐き出した憎まれ口も、相変わらず柳に風で。
全部が全部、軽い調子で言われたその内容は、けれど風と言うにはあまりに鋭利だった。

「……何で、私にそんなこと言ったの?せっかく「大人のマーリン」が、上手に私を騙していたのに?」

ふっと笑みを吐き出すように、しかし心情を悟られまいとして、私は顔を伏せながら皮肉るようにそう言った。
「大した意味は無いんだけどね」と、まるで世間話をするように、軽やかにマーリンが返答する。

「ただ、ね。ごめん。キミがそういう顔するの、ちょっと見てみたかったんだ。ごめんね」

そう言ってマーリンは私の頭を撫でる。
重くもたげた頭をそっと持ち上げてマーリンの顔を見れば、穏やかなすみれ色の瞳が優しくこちらを見ていた。

ふ、とマーリンが花のような笑みを浮かべる。
そのまま流れるような仕草で私の顎を捕まえると、優しく微笑んだまま、いつもの声音でこう言った。

「そういう顔も可愛いね。あぁ、やっぱり甘いや。本当に姉さんは、私のことが大好きなんだね」

……そう言って笑ったマーリンの顔は、まるで無邪気な子供そのものだった。



――夢を見た。
花畑をマーリンと歩く夢だ。

いや、見たのは今ではない。もっと前。

マーリンが意味の分からないことを意味深に言うのは今に始まったことじゃないけど、その夢は輪をかけて分からないことを言っていたのは何となく覚えている。
それ以外のことは、本当にぼんやりとしか覚えていないけど……。

「傷つかなくて良いんだよ」

……何でか、そうやって慰められた、ような気がする。

夢は夢だ。
現実は非情だ。

傷つかなくていいって言うなら、今すぐ私の元に来て、ごめんって言ってくれたらいいのに。



仕事を終えて帰宅したロマンが、一人リビングで黄昏れる私を発見して「ただいま」と告げる。
「おかえり」と返すと、ロマンはきょろきょろと周囲を見回して「マーリンは?」と問うてきた。
その言葉に「知らない」とつっけんどんに答える。

「たぶん女の子のとこでしょ。スマホ見つけてから放蕩するようになっちゃって」

部屋に置いたままだったスマートホンを手に入れてからというもの、マーリンはふらりとどこかへ出かけてしまうようになった。
まだ未成年のくせに朝帰りは流石にどうかと思って一応咎めたのだが、聞くわけも無く。

「女の子のトコって……それ、許しちゃっていいのかい?だって一応、君の……」
「マーリンにとっては未来の話だし」

気分的には勿論よろしくない。
何が悲しくて恋人が他の女と遊びに行くのを見送ったり出迎えたりせねばならんのか。
でもだからって、「貴方は私の恋人なんだから」とか言っても向こうにとっては未来の話だし、下手すると「じゃ、今別れたってことで」とか言われそうだし。

……女好きなのは知っているし、過去たくさんの女の子と遊んでいたことも察して余りあるので、別段今更ショックを受けたりはしないけど……。

まぁ、現在進行形で他の女の子とよろしくやってると考えたら、やっぱりモヤモヤはしてしまう。

「あーあ、小さいころはあ~んなに可愛かったのに。「お姉ちゃんの幸せが僕の幸せ」みたいなことも言ってくれたのに……天使が悪魔に……どこで育て方間違えたんだろう……」
「上辺の装い方が変わっただけで、中身はあのまんまなんだけどね」
「……それマーリンも言ってた。何でロマンそんなこと分かるの?」
「知ってただけで、分かったわけじゃないよ」
「むぅ……」
「だからずっと言ってたじゃないか、マーリンなんかよせって」

言ってたけど、そこまでは聞いてない。

まったくマーリンってやつは本当によく分からない。
知れば知るほど理解から遠ざかっていくような心地がする。
分からなくたって、寄り添っていられればそれで良かったんだけど、私が思っていた「人でなしのマーリン」のイメージと、実際のマーリンの冷血さは、何ていうか温度が違う。

ひどいことをしたり言ったりしている筈なのに、どうしてあんなにも穏やかでいられるのだろうか。
ただ「綺麗なひと」と言うには、マーリンの在り方は妙に「浮いて」いる。

ぼうっとそんなことを考えていたら、ロマンがじとりと私を恨みがましそうに見つめて言った。

「大体、小さい頃は天使だったのにっていうの、ボクのセリフだからね」
「はぁ?」
「昔はロマンお兄ちゃんロマンお兄ちゃんってボクの後ろをついて歩いてたのに、ちょっと目を離した隙にあんなロクデナシに骨抜きにされるなんて……」
「いつの話してんのっ!」

それって私がまだ小学生とか中学生の頃の話じゃないか。
その頃は、その、年上の優しいお兄ちゃんに憧れても何ら不思議ではないっていうか、その記憶に連動して幼少期の失態も連想されてしまうので今すぐ何もかも忘れてほしい。

「はぁ……もうなまえちゃんにとって大好きなロマンお兄ちゃんじゃ無くなっちゃったんだなぁボクは……」
「いや……別にそんな……わ、私が成長しただけで、ロマンのことは普通に好きだけど」

普通に好き、というか、普通に今でも大好きなんだけど。
だけどそんなこと面と向かって言えるほど素直な性格でないから、こんな言い方しか出来ない。
そしてこんな言い方だと、ロマンには通じないことも分かっている。

「ボクのことは普通に好きで、マーリンのことは大好きなんだろう!分かってるんだぞぅ!」
「何を対抗してるのさ。恋人とお兄ちゃんじゃそもそもベクトルが違うでしょ」
「それはそうだけどでも悔しいッ!あんな人でなしにかすめ取られるなんて!君はボクの可愛い妹だったのに!」

喚きながらロマンが顔を手で覆う。
呆れながらその様子を見ていたら、ロマンが突然ハッとした様子で顔を上げて、震えながら私の方を見た。

「も、もしかしてボクが知らないだけで、過去にも彼氏がいたりしたのかい……!?」

……。ほんとーにバカだなロマンは。

「い……」

るわけないでしょ、と答えようとして、ふと思いとどまる。

「さぁ?どうかな」
「えっほんとにいたのかい!?」
「さてね」
「そ、そんな……いつの間に……」

一言もいたなんて言ってないのに、ロマンはこの世の終わりのような顔をして目の前のテーブルに突っ伏した。
その様子を横目で見ながらこっそりと舌を出す。

「知らない間に、君も随分と大人になっちゃったね……」
「大人になったら悪いみたいな言い方だなぁ」

実際のところ、全然まったく成長してないってのを痛感したばっかりなので、言われて苦笑するしかない。
恋仲になったのはマーリンが初めてだし、そもそもマーリンに恋をするまでは、愚かにもずぅっと一人の男を甲斐なく思い続けてたっていうのにさ。

……いや。本当はもう、ずっと前からきっと諦めていたと思う。
ロマンが誰のモノにもならなかったから、私はずるずるとその情を引きずり続けていたに過ぎない。

結局私にとってロマンはどこまでも「憧れのお兄さん」で、ロマンにとって私は「可愛い妹」なんだ。
その関係性に甘んじてしまった時点で、きっともうその恋は終わっていた。

……マーリンに会いたいな。

ふとそう思う。

クズで人でなし、なんてことは、分かっていたつもりだった。
想像以上の悪人なのかもって、そういうのも覚悟していた。
けれどもしかしたら、マーリンの人でなしぶりは、想像以上というよりも、想像の埒外にある得体の知れないものなのかも、……なんて。

ふわふわとして掴みどころの無かった輪郭が浮かび上がって、けれどそのカタチは私の知っているどれにも当てはまらない。
私はマーリンのことを本当に何も知らなかったんだと思い知らされる。

私は本当に騙されていたのだろうか。
マーリンを信じていないわけではないが、私の知るマーリンが私にすべてを見せていたとは到底思えないし、私が見ていたマーリンなんて、十八のマーリンが語ったように見せかけのハリボテでしかなかったのかもしれない。

それでも私はそのハリボテのマーリンが好きで。
そしてそのハリボテを作り上げたマーリンが、きっともっと好きなんだと思う。

……なんていうのは、都合のいい思い込みなのだろうか。



マーリンが幼児化して以降、ずっと仕事を休んでしまっていた私だが、成長して最早逆に手に負えなくなってしまった為、今は仕事復帰している。
仕事から帰宅して寛ごうとしたところで、ここ最近は出かけていることの方が多かったマーリンが珍しく家にいることに気が付いた。

「おかえり」
「……ただいま」

多少気まずくなりながら、リビングのソファでごろつくマーリンの足元に腰掛ける。
随分と行儀の悪いことだが、何故か優雅に見えなくもないのは何故なんだ。

私が座ったのに気づくと、マーリンは起き上がって「どうせならこっちに座ればいいのに」と先ほどまで枕にしていたひじ掛け部分を指差して言った。……それは私に枕になれという事か。

「座るスペース無いでしょ」
「言ってくれればどいたよ」
「別にこっちに座れるから」

言いながらマーリンの脚をぽすりと叩く。

「キミを足蹴にするなんてとんでもない。というわけで」
「ちょっと……」

せっかく反対側に座ったのに、結局マーリンが頭の向きを変えて、無遠慮に私の脚に頭を乗せてきた。
思わず深いため息を吐く。

これが大人のマーリンなら頭を撫でたりもするのだけど、未だにこのマーリンとどういう距離感で接していいのか分からなくて、戸惑ってしまう。

「今日はご飯作らなくて良いのかい?」
「ロマン、今日は帰れないんだって。マーリンはどうせ食べたんでしょ」
「んー、まあね」
「私も誰もいないと思って食べてきちゃったし」

そう言って深く息を吐く。

ここ最近は三人ともすれ違いが続いて、私がみんなのご飯を作ることもめっきり減ってしまった。
マーリンも、いつ聞いてもご飯はいらないって言うから、もう聞くこともしなくなってしまったし。

何だかんだと喧嘩しつつ、三人で食卓を囲んでいたのが懐かしい。

膝の上にあるマーリンの頭を見下ろしてみる。
人の気など知らないとばかりに、悠々と目を閉じて寛ぐマーリンにムッとしつつも、久々にこうして二人きりになれたのを喜ぶ気持ちも確かにあって、複雑な胸中にまた小さくため息を吐いた。

「キミのそれはさ、恋なんだよね」
「それ?」

ぼうっとマーリンの顔を眺めていたら、唐突に問われる。
本当に唐突で意味を掴みあぐねて、私は首を傾げた。

「私に対するキモチ?甘さの原因?」
「別に叩き落しても良いんだけど」
「えぇ、酷いなぁ」

甘さの原因がマーリンへの恋心と言われてはそういう反応にもなる。
単に子供のマーリンが可愛かっただけで、別に惚れた弱みで甘やかしていたわけではない。

「私が甘やかしたっていうより、子供のマーリンはいい子だったから怒る必要が無かったんだよ」
「あぁ……そうじゃなくて……」

マーリンがふと腕を伸ばすと、私の頬にかかる髪をさらりとはらう。
まるで恋人にするような優しい瞳で私を見上げて、「こういう気持ちのこと」と囁いた。

「……っこ、ういう気持ち、って?」
「今キミが私に向けてる感情の事だよ。自覚無いのかい?こんなに……顔真っ赤にしちゃって」

マーリンの人差し指が控えめに私の頬をつんとつつく。
途端に熱が迸るような感覚が走って、私は咄嗟にマーリンの指を押しのけた。

「私で遊ばないで」

キッと目を見据えて強い口調で言ったつもりだけど、内心の動揺はお見通しのようでマーリンは愉し気に目を細めていた。
やっぱり膝から落としてやろうかと立ち上がりかけた私を遮るようにマーリンが口を開く。

「キミのそれが好きで、つい」
「それ?」
「甘いのがさ」
「今から辛口で行くことにする」
「はは、絶対無理だよ」

でもそれはそれで楽しそうだ、なんて言われて私は次の手を封じられてしまう。
どうしたらマーリンを動揺させることが出来るのか、私は大人のマーリンが動揺した瞬間を思い出してみる。

……あれは、私が好きだって言う前提あっての動揺ばっかりだな、多分。

全く参考にならない思い出に眉根を寄せる。ついでに少し胸が痛んだ。

「どうかした?辛そうな顔して」

マーリンが興味深げに私を見つめながら言う。

もう少し心配そうな声を装っても良いと思うのだが、私に対して繕うつもりが無いというのなら、それはそれで良いのかな。
……いや、尊重されてないだけなのか、微妙なところだ。

「どうもしない」
「嘘つきだね、ねーさん」
「マーリンに言われたくない」
「私が嘘つきだと思うのかい?」
「……」

分からない。嘘だったとは思いたくないが、謎が多いのは事実だし、実際隠し事は多い。

「意地悪だとは思う」

はっきりとした答えが出せず、結局負け惜しみのようにそう言った私に、マーリンはにやりと目じりを下げて楽し気に笑った。

「では、意地悪な私から、意地悪な質問だ」

くるくると指の先で人の髪を弄びながら、マーリンが弾むように言う。
うっと顔を歪ませる私になお楽しそうに目を細め、マーリンが「そう警戒しないでおくれよ」と笑う。

「意地悪するなら私も意地悪するからね。変な質問だったら答えない」
「ちょっとからかっただけだよ。大したことじゃない。キミは私のどこが好きなのか、それを聞いてみたかったんだ」
「えっ」

思ってたのとは違う角度から来た質問に、私は狼狽した。
確かに大したことではない、のかもしれないけど、意地悪な質問というのも間違っていない。
私を好きでいてくれた(と、信じたい)大人のマーリン相手なら、答えるのも吝かでないのだけど、特別な感情はきっと何も抱いていない、この性悪なマーリン少年にはちょっと言いづらい。

「……それを聞いてどうするの?」

誤魔化すように言う私に、マーリンは「んー」と考える仕草をした。
というか、まず膝からどいてほしい。

「参考にしようかなって」
「何の?」
「恋のお勉強?」
「お勉強って……恋したこと、無いの?」
「無いね」

あっさりとマーリンが肯定する。

……確かに私は、マーリンは誰にも本気になれないタイプなんだろうとは思っていたけど。
本当にそうだと言われると、やっぱり少し驚いてしまう。
きっと子供の頃からモテまくったろうから、恋情を向けられるばかりで自分から追いかける恋には発展しなかったのかもしれない。

「恋がしたいの?」
「うん?どうかなぁ。単なる興味本位。誰かが誰かに恋をしているのを見てるだけでも、私は楽しいよ。恋心って面白いよね」

当事者であるという視点がまるで欠けているような発言だ。
本当に純粋に、私の恋心がどういうものなのかを知りたいだけなんだなぁ。
その相手が自分でなくたって構わないのかもしれない。

私がマーリンを好きで、ジタバタしているのが、単純に面白い。
本気でそう思っているらしいのが、言葉の調子から伝わってきた。

「本人には言いにくい?」

笑ってマーリンが言う。
私は片眉を吊り上げると、渋々口を開いた。

「どこを好き、って聞かれたら、全部って答えるしかないんだけど……」
「はは、熱烈だね。例えば?」
「例えば……まずは顔でしょ」

マーリンの頬を指先でつつきながら答える。
大変悔しいが、マーリンの顔は、私がおよそ今までお目にかかったことが無いほど完璧な美形と言って差し支えない。
ロマンもそれなりに整っているんだけど、マーリンのそれはちょっと、下手すると絵画か何かから抜け出してきたのではないかと言うほど人間離れした美しさだ。
異様に長い髪も、寧ろその異質なまでの美しさを引き立てていて、目を奪われてしまう。

「容姿かぁ。まぁ私は美しいからね」
「分かってるところがずるいけど、分かってなくてもずるいことには変わりないな」
「キミだって可愛いと思うよ」
「……そういうところがずるい」
「そこも好きなところ?」

くすくすと笑いながらマーリンが言う。当たっているから始末に悪い。

「世の中には、容姿だけで恋をしてしまう人間もいるものね。キミもそうなのかい?」
「……、マーリンの見た目は、正直初めて見たときものすご~くときめいたけど……」

ドキドキして、また会えないかなって思ったのは間違いない。
けど、恋をしたのかと言われるとどうだろうか。
何度か会ううちに、ナンパで女好きな面を知って最初のときめきはスッと薄れたのを覚えている。
いや、でもやっぱり顔見るとときめいちゃうけど。

「顔がそこまで大事なわけでもないよ。マーリンは……物腰とか口調とかも、まぁ、軽いけど……柔らかくて丁寧なところとか、好きだし……」
「へぇ」

……本人に向かって改めて口にすると物凄く恥ずかしい。というか、本人でなくても恥ずかしい。

「あとは……声、とか……」
「声?」
「マーリンは何もかもずるいけど、声は特にずるい。その顔にその声って、もう凶器だよそれは」
「そんなに褒められると照れるなぁ。お礼に耳元で何か囁こうか?」
「ヤメテ、冗談じゃなくぞわぞわしてしまう」
「興奮するってことかな」
「うるさい」

答えに窮して雑な憎まれ口が零れ落ちる。
さぞからかわれるだろうと身構えていたら、マーリンは口元に笑みを浮かべながらも何やら考え込んでいるようだった。

「なに?」
「いいや、何でも。それだけ?」
「えぇっ、まだ続けるの?」
「だって殆ど私の身体構造についてだったじゃないか。普通は性格に言及するものなんじゃないのかい?」
「あぁまぁ、優しい人が好き、とかね」
「女の子の常套句だよね」

そりゃあ誰だって自分に優しい人が好きだろう。

「私も優しい人は好きだよ。マーリンは……私に、優しかったし」
「私は誰にでも優しくしているつもりだよ」
「そうだね。……でも今の……君は、別に私に優しくはないよね」

ていうか、ひどいよね、色々と。

私が傷つかないとでも思っているのだろうか。
普通に辛いししんどいし、結構傷ついてるんですけど。

「優しくしたら、もっと甘くなるかな?」

マーリンが、弄んでいた私の毛先をつんつんと引っ張りながら言う。地味に痛い。

「今更猫被られてもね」

じとりとその眼を睨みつけながら言えば、マーリンが肩をすくめる。

「優しくない私は嫌いかな?」
「……嫌いでは、無いけど……」
「好き、なんだよね。優しくないことが分かっても。自分が知っているマーリンが、虚像だってことが分かっても」
「大人になって変わったのかもしれないじゃん」
「だと良いけどね」

にこやかに笑みながらマーリンが言う。
そんな綺麗に笑いながら、どうして人を傷つけることが言えるのだろうか。

「キミは、キミが知るマーリンとは違うこの私にも、その恋心を向けているよね。じゃあやっぱり、好きなのは容姿や雰囲気ってことなのかい?」
「……、……」

確かに。私が知っているマーリンは、私を好きだと言って浴びるほどの愛をくれた人だから、今のマーリンとは違っている。

だけどやっぱりマーリンはマーリンだ。
こうして過ごしていると、私の知っているマーリンとの差異を思い知るだけでなく、やっぱり彼は同じマーリンなのだと痛感する。

ただ、私を好きでないだけで。
この人は、マーリンなんだ。

「マーリンと過ごす時間が……何よりも好きだったの……」

ぽつりと、口から想いが零れ落ちた。

共にいる時間が何よりも大切で、これを無くしたくないって思ったときに、私は恋を強く自覚した。
本当はもう随分前から分かっていたくせに、マーリンの優しさに甘えて現状を変えられないでいただけで。

マーリンのいる空間が、マーリンと共にいる時間が好き。
だから私は……マーリンのすべてが好きなのだと、そう言える。

「今でも、それは変わってないよ」
「……だから私を追い出しもせず、膝から落としたりもしないわけだ」
「まぁ、そういうコト」
「彼にはそう思わないんだ?」
「彼?……ロマン?」
「そう」

ふと昔を思い返す。ロマンを失うことが怖かった過去。
……今でもそれは変わらないけど。そうだね、確かにロマンといる時間だって大好きだ。

違うのは……変わってしまったことは。

「……ロマンのこと、好きだった。ロマンと両想いになりたかった。でも無理だったの」
「諦めたのかい?」
「うん」
「それで私に鞍替えした?」
「嫌な言い方するなぁ。マーリンが自分を好きになれって言ったんだよ?」

苦笑しながら答えると、マーリンが意外そうに「へぇ」と呟いた。

マーリンとロマンと、その二人に対する感情で違う部分は、突き詰めればたくさんあるのだけど。
一番大きいのは、私以外を見ないでほしいと、そう思うかどうかだろうか。

ロマンにもし誰か恋人が出来たら、勿論それも寂しいんだけど、それは家族に別の居場所が出来たことに対する寂しさだろう。

マーリンは違う。
マーリンには、私だけを好きでいてほしいって、そんな風に思う。

……というようなことを、このマーリンに言ったら多分面倒くさいと思うんだろうな。
実際のところ、大人のマーリンにも言ったことは無い。

「まぁでも、どこが好きって言えば、やっぱり全部だよ」

話を逸らすようにそう言って話題を結んだ。
正直、どこが好きって聞かれてもまともな答えなんて出てこない。いつの間にかズブズブにハマってしまってたんだもん。
ていうかマーリンに迫られて落ちない女なんて果たしているのだろうか。
うん、これは惚れた欲目かもしれないけど。

「何の参考にもならない答えだ」

マーリンがつまらなそうに言う。これでもちゃんと答えた方なのに。
好きなところを全部詳らかにしろと言われたら、朝が来ても終わらないんだからね!

「恋は理屈じゃないんだよ。落ち方も様々だし、気持ちだってコレって簡単に定義出来るようなものじゃないっていうか……」
「ふむ、確かに。人によって味わいも違うし」
「お菓子じゃないんだから」
「私にしてみればそんなものだよ」

……他人事のように言いやがって。
マーリンにとっては他人のコイバナなんて蜜の味、いや酒のつまみ、いやいや映画館のポップコーン?
本当、好きでいるのがバカみたいに思えてくる。……だからってやめられないんだけど。

「もういいでしょ?私疲れちゃったから寝たいんだけど」
「私も寝ようかと思っていたところなんだ」
「…………ちょっと」

寝ようと思っていたなどと言いつつ、マーリンは私の膝から頭を起こすと、今度は私に跨るようにして圧し掛かる。
向かい合う形で私に跨るマーリンをじとりと睨みつけたら、ぴかぴかと形容するに相応しいとっておきの笑顔でマーリンが私を見下ろしていた。……またこれか。

「マーリ……んっ」

咎めようと口を開いた矢先に、マーリンに唇を奪われる。
強めに胸を叩いて離れるよう訴えても意に介さず、好き勝手に口内を蹂躙される。

「いい加減慣れてもいいと思うのに」
「……っ、慣れとかじゃなくて、そもそも無許可で唇奪わないで!」
「恋人同士のキスに許可なんて必要かな?」
「っこ、恋人じゃないでしょ……」
「じゃ、今から私はキミの恋人だ。愛してるよ」
「な、んっ……!」

投げやりな言葉と共に再び唇を押し付けられる。
何が愛してるだ、恋ひとつしたことないガキのくせに。

「今日、彼は帰ってこないんだろう?せっかく二人きりなのに、何もしないのは勿体ないじゃないか。ねぇ」

そっと耳元で囁かれて、ぴくりと身体を揺らした私に、マーリンがくっと喉の奥で笑った。
「本当に私の声に弱いんだね」と小さく弾むように言われて、ぎろりとマーリンを睨みつける。

「煽ってるのかい?」
「怒ってるの!」
「どうして?好きな人に迫られているのに?」
「性欲のはけ口にされて嬉しいわけないでしょ」
「そんなんじゃ……、ああ、うん。欲求のはけ口という意味では一緒かなぁ。キミが美味しいのが悪いんだよ」
「美味しいって……、……――あ」

ぱちり。マーリンと目が合う。

ぐらりと脳髄が揺れて、視界がマーリン以外を捉えられなくなっていく。

「……や、だ、それ、やだ」

ぎゅっと目をつむって絞り出した言葉に、マーリンが「あぁ、ごめん」と軽い口調で言った。

「わざとじゃないんだよ。殆どの人間には分からない筈なんだけど、キミとは相性がいいみたいだね。時々いるんだ、見えてしまう人間が。一応抑えてるんだけど、まだまだ私も未熟だね。でもちょうどいいや、ね、こっちを見て」
「い、いや……」

マーリンが何を言っているのか分からない。
言われたことの意味を咀嚼したくとも、腹の底から噴き上がる衝動を抑えるのに必死で、それどころじゃなかった。
いやいやと首を振って頑なに目を開けない私に、マーリンは泣いている子をあやすような柔らかな声で「大丈夫だよ」と言う。

ぐいと身体を押されるような感覚がして、ぐらりとソファに頽れる。
反射的に目を開いた先に爛々と輝くマーリンの目があって、舌なめずりでもしそうな顔で私を見ていた。

頭の中が真っ赤に染まる。

――わたしは、このひとがほしい。

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