「この世のものでない」ものが集まる不思議なお宿で、少女はそれに出会いました。

もやのように漂うそれを見て、少女は首を傾げました。
ただのもやにしては、何だか妙な感じがしたのです。

もしやと思い、小さな声で「お客様ですか」と少女が尋ねると、そのもやは一瞬だけ揺らいだように見えました。

少女はもう一度呼びかけます。

「お客様なら、こちらへどうぞ」

手を差し伸べ、笑ってそう言いました。

何も答えないそのもやは、少女に近寄ると煙のように消えてしまいました。

不思議な現象に、少女は再び首を傾げます。
もやのあった付近に手をかざしてみるものの、やはり何も存在しません。

気のせい、では無かったと思うのだけど。

そう思ったものの、少女自身にも、その周辺にも、何にも変化はありません。
あとで誰かに聞いてみよう、そう思ったまま、少女はその出来事を忘れてしまいました。

――それは。

彼は、少女の中におりました。
自らを見つけた少女の中で、彼はもやのように漂うのでした。

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