ノッブに傷を舐められない
しまった、と思った。
「ほう。わしが手ずから治療してやったというに、貴様わざわざもう一度傷をつけたと言うか」
ノッブが威圧的な目でわたしを見る。びくりとして身体を揺らしたわたしに、ノッブは更に眉を寄せる。
さっきのことだ。
ご飯を食べていたら、思い切り舌を噛んでしまった。じわりと口内に血の味がしみる。
顔をしかめて口をおさえるわたしに、ノッブがどうした、と問いかけてきて。したかんだ、と素直に言ったら、彼女はわたしにこう言った。
「どれ見せてみい。何じゃ、こんな傷なめたら治る。ほれ舌を出せ、わしが直々に治療してやろう」
え、と呆けたわたしの顎をノッブが掴んで持ち上げる。もう一度舌を出せ、と言われて、わたしは素直に舌を出した。
……それが嬉しかった。だからわたし、もう一度、なんて、欲をかいてしまって。
ねえ、また舌を噛んだから、と軽い気持ちで言ってみせたら、このざまだ。
「ご……ごめんなさい……」
「なまえ」
「っ」
小さくなって俯くわたしの顔を、無理矢理上向かせられる。
「……ぁ」
冷たい目をしたその顔に、叱られているのにときめいてしまった。
あぁ――こんな目を、されたら、もう。
「舌を出せ」
「っ、は、はい」
べ、と慌てて舌を出す。
先刻のように呆けていたら、きっともっと怒らせてしまう。
ノッブの冷たい顔が近づいて、あ、なめてくれるんだと、そう思ったら。
「いっ!?」
ノッブがわたしの舌を思い切り噛んだ。
あまりの痛みにじわりと目尻に涙が浮かぶ。
「ぁ、ぐっ」
反射的に引っ込めた舌を、ノッブの舌が追いかけてくる。
傷口を嬲るように責められて、痛みにぼろぼろと涙がこぼれた。
「ぅ、う」
「逃げるでないぞなまえ。これは仕置きじゃ」
「ふぁ……」
「良いか。そなたの身体が誰のものか、今一度教えてやる。温情じゃ。次に忘れたら容赦せん」
「、は、はい……」
強い力で押し倒されて、手荒く服を脱がされる。
がぶりと首筋に噛みつかれて、あまりの痛さに声も出なかった。
「そなたに傷をつけていいのはわしだけじゃ。それがそなた自身であっても、無意味に傷をつけるなど許さぬ」
言って、今度は肩に噛みつかれる。
一つの容赦も感じられない苦痛に、わたしは悲鳴をあげて悶えた。