スイーツギフト
記憶のよすがになるようにと贈ったそのマペットを、なまえが大事に思ってくれていることは分かっていた。
とは言えそれ以外にも贈り物はしているし、初期に贈ったこのマペットよりも、後からなまえに似合うものをと誂えたものたちの方が、よっぽど喜んでくれていた。
だからこのマペットを贈り直すことは、なまえを喜ばせる為というよりも、個人的な都合の方が大きかったのだけど。
泣いてしまったなまえの小さな肩が震えるのを見つめる。しゃくりあげる声が部屋に響く。
あの頃私はキミに恋などしていなくて、
キミの私への想いも花開く前で。
それでも、
「あの頃にはもう、キミは私にとって、忘れてほしくないひとだった」
すらりと本音が滑り落ちて、そっと苦笑を零す。
なまえの私を想うこころは、私の心まで溶かしてしまうのだ。
とろり、とろりと。じゅうじゅう燃えながらも、蜜のように流れ込む感情が、静かに胸を満ちていく。
なまえは不意打ちを受けた、と非難するように言ったけれど、私だってそうだ。そこまでの情を燃やされるとは思っていなかったから、これで結構戸惑っているんだよ。
「忘れられるのは苦手だ」と、語った夜のことを思い出す。あのときも、なまえとのひとときが楽しくて、率直に話すなまえが珍しくて。その言葉に応えようと努めたら、本音がぽろりとこぼれ落ちたのだった。
甘やかな感情を堪能して、気が抜けていたのかも。なまえの心を食んでいる最中は、どうにも気が緩んでしまう。
私の言葉に対して「忘れない」と語ったなまえだが、どうやら彼女はそんな会話ごと忘れているらしい。そんなことだろうと、私は口の中で小さく笑った。責める気はないし、気にしてもいない。
私となまえが過ごした日々が、覚えきれないほどの出来事で満ちていたと、これはそれだけの話なのだ。
この先、なまえが過ごす日常の中で、私を思い出すことが無くなっていくのだとしても。
些細な思い出たちの数々が、彼女に私の存在を紐づけてくれるだろう。
そんなもので良いのだ、私が手に入れるものなんて。
それだけで、良いんだ。
きっと、これから過ごす時間の中で。
一生分の