何も回避出来てない事に後から気づいた

経緯は省くが、マーリンが分裂して子マーリンが仲間に増えた。

「えへへへへへ」
「顔がたるみきってるよなまえ」
「だってめちゃくちゃ可愛いんだもんえへへへへへ」

本人の前で子供姿の本人を背後から抱き締める私に、マーリンが苦言を呈す。
私に抱き締められている当人――子供のマーリンは知らん顔でぱたぱた足を動かしながら、時折私を見上げてはにこりと微笑んでくるのでそのたびに心臓を撃ち抜かれ子マーリンに再び抱きつくの繰り返し。
見ているマーリンが呆れるのも無理はないが、可愛いものは可愛いんだから仕方ない。

子マーリンは一見すると美少女にも見える、とにかく愛らしい顔立ちをしている。
当たり前だが大人マーリンと違って小さく柔らかな身体はとても触り心地がよくて、うん、あんまり言うと変態みたいだな。やめよう。

「キミが子供姿の私を抱き締める様を見るのは妙な気分だな」
「マーリンにも子供時代が恥ずかしいとかいう気持ちあるの?」
「うーん……まあ今より未熟だった面を見れば歯痒くもあるが、基本的には当時も今も精神性に変わりはないからねえ」
「な~んだ」

ちぇっと口に出して言った私を、腕の中の子マーリンが再び見上げ、首を傾げる。ちょっとだけ眉尻を下げると、彼は言った。

「がっかりした?」
「してないよ♡好き♡」
「メロメロだなぁ」

大人マーリンの台詞を華麗にスルーして、子マーリンを再びぎゅうぎゅう抱き締める。
どんなにだっこしても嫌がられないし、飽きて脱出されることも無いので、気が済むまで愛でていられるのがまた最高なのだ。

「まったくキミは……一応言っておくと、どんなに愛らしく見えてもソレは私だからね?天使もかくやという愛らしさだが実態は単なるクソ野郎だよ」
「その自分上げと下げが極端な自己紹介何?」

普通に言ってるけど自分のこと「見た目は最高だけど中身は最低」って言ってるだけじゃん。
まぁさっき精神性は変わらないって言ってたから、人間的な倫理観に照らせばそうなのかもしれないけど、でも子供のマーリンは少なくとも女の子を追っかけては問題起こすようなことはしてないでしょ。

「ねぇマスター、今日からボク一緒に寝てもいい?」
「え!?良いよ♡」
「こらこら言ってるそばから」

突然の提案に二つ返事で了承すると、マーリンが呆れながら私の隣に座りじっと子供の自分を見つめる。
子マーリンは素知らぬ顔で私をにこにこと見つめ、ありがとうマスター、と呟くと顔を寄せて私の頬にちゅ、と口付けた。

「ぶぁっ、かッ、ヴァッ」
「ふふ、顔真っ赤だね、なまえおねえさん」
「こ、この夢魔め~♡」
「こら。何子供相手に取り乱しているんだい」
「はひ」

キスされたほっぺを押さえて狼狽える私の顔を、マーリンが強引に自分に向ける。
そこにはちょっとむっとした顔のマーリンがいて、それにも狼狽えて変な声が漏れた。何その顔。

「キミとコレが一緒に寝たら、私はどこで寝ろって言うんだい」
「えっ」

自室あるじゃん!!

反射的に出そうになった言葉を慌てて飲み込む。言われた内容をもう一度頭の中で反芻して、む、と顔をしかめた。
マーリンが嫉妬してるとかそんな期待はいつもしないようにしてるんだけど、でもあんなタイミングであんな顔されたらちょっとは期待しちゃうじゃん。違うのかよ。自称心を持たないエイリアンのマーリンも、相手が自分となると違うのかな(ぽっ)とか思ったのに。
と心の中では恨み節を放つものの、私と一緒に寝ることを前提に言われるとそんなツッコミは出来なかった。
だって一緒に寝たいもん。

なら言うべき事は決まっている。
閉じた口をもう一度開くと、私はこれしか無いという名案を言葉にした。

「三人で寝」
「「絶対に嫌だ」」
「ハモった」

しかも食い気味にハモった。凄い。息ピッタリ。

マーリンが子マーリンをコレ呼ばわりしているのもあって、さっきは嫉妬してくれたのかなとか一瞬思っちゃったわけだけど、もしかして単純に自分同士嫌いあっているのか?何で?こんなに可愛い&かっこいいのに!?
マーリン、いつも自分の事自分で持ち上げるし、好きとは言わないまでも嫌うとか無いと思ってたのに。あっでもマーリンの嫌いなものって……えっグランドキャスター(小)だから……?何……?そこには想像を絶する理由が隠されていたりするの?そういう重要事項はちゃんと私に教えなさいよッ!

……などと一瞬の間に考えてしまったのだが、マーリンの口から出た台詞は全然そういう事ではなかった。

「三人で寝たらキミとセックス出来ないじゃないか」
「子供の前で何ぬかしてんの!?」

本当に何をぬかしてくれてんの?
セッ……いやそれを考えなかったと言えば嘘になるが、如何に自分とは言え子供の前で口に出して言う奴があるか!

「じゃあボクも参加するよ」

スルッと子マーリンが発した台詞に度肝を抜かれて、一瞬思考が停止する。

「あぁ……それもアリか」
「無いよバカッ!!」

普通に受け入れようとするマーリンに急いで否定する。
しかし子マーリンが楽しそうに「アリだよアリ」と更に被せてきた。

「そりゃあ出来れば二人きりの夜を過ごしたいけど大人のボクを追い出せないんでしょ?なまえは優しいから」
「私が二人の3Pならキミも楽しめるだろう?私としてはなまえが二人の方が嬉しいけど」
「私は分裂とかしないよ!!」

普通に3Pとか言ってる!!何この人たち!アッ夢魔か……。
えっマーリンって子供時代から既に……そういう……えぇ……早……いや当時を思えば普通か……?いやいや3Pは絶対普通じゃないでしょ。
あと私が増えることを普通に望まないでほしい。何かのフラグになって本当に増えたら困る。

と、「増えた私がマーリンに愛でられる」のを想像すると、何かめちゃくちゃモヤッとした。
やはりマーリンが子マーリンにやけにつっかかるのはそういう事だったりしませんか?人間はまぁ人間だし……と思いつつもう一人の自分はある意味最大のライバルだから、とか、無い?無いですか?ねえ??

そっとマーリンを見つめると「ん?」と小首を傾げられる。
ぐぬぬ、全然分からん。問い詰めたいが子マーリンのいるところでは聞きづらい。二人きりになる機会があったら絶対聞こう。
……ついでに子供時代の性事情についても聞いとこ。大人の方にね。聞くの怖い気もするけど、今更何が来ても平気だもん。寧ろ知っといた方が参考になる気がする。

見つめ合いながらむむむ、と考え込む私に、マーリンはにこりと微笑むと、穏やかな口調で言った。

「3Pする気になった?」
「なるか!バカ!あんまり変なこと言うなら二人で寝かせるからね」
「えっごめん」

素直に謝られて思わず呆れた。そんなに嫌なのか。やっぱり当人同士は仲がよろしくないっぽいな。

「じゃあどうするんだい、なまえ」

子マーリンが私を見上げて問いかける。どうでも良いけどいつの間にか呼び捨てで呼ばれていて、そういうところだぞ、このジゴロめ。年下の美少年に呼び捨てで呼ばれるってクるものがあるな。
邪な事を考えながらも、見上げる子マーリンを抱き締める腕の力を強めて再び同じ内容を繰り返した。

「三人で寝るでいいじゃん」
「えー……」

答えると、やはり不服そうな顔をされた。
隣の大人マーリンも、何も言わないまでも渋面になっている。どっちも可愛いので写真撮りたい。

「何がそんなに嫌なの?」
「なまえといっぱい遊びたかったから……」

しゅんと沈んだ様子でそういう子マーリンに、ドッキンコと胸が高鳴る。だけどそれはそれとして、私は子マーリンが見た目通りの無垢な天使では無いと流石に気づいていたから、その言葉の真意を問いかけた。

「……遊びってどういう?」
「お互い気持ちよくなれるコト」
「よし!三人で寝よう!」

マスター権限で決行しました。

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