ももえちゃんより
静かな室内には、オレが黙々と作業する音だけが響いていた。何時間描き続けていたのだろうか。デスクワークには慣れているものの、さすがに腰も尻も背中も目も頭も痛い。少し休憩した方がいいだろう。最高の神エロ漫画を思いついたものだから、ついつい筆が乗って長時間作業をしてしまった。
とりあえず今描けたところまでをきっちり保存して、すっかり冷めてしまっていたコーヒーをがぶりと飲み干す。新しいコーヒーを淹れ直しながら、オレは昼間に目撃したマーリンとなまえちゃんのイチャイチャを思い返していた。
遡る事数時間前、仕事が忙しくて昼食を食べ損ねてしまっていたオレは人のまばらな食堂で遅いランチをとっていた。そこへ偶然現れたのがマーリンとなまえちゃんである。
なまえちゃんも遅いランチを食べにきたらしく、食事が乗ったトレイを持ってオレから少し離れた席に腰を下ろした。そしてマーリンはその正面に座り、二人はオレを気にすることもなく楽しく会話を続けていた。人の少ない食堂はわりと静かで、当然二人の会話もオレの耳に入ってくる。そう、勝手に聞こえてきてしまっただけで盗み聞きをしようとしてした訳ではない。断じて。どうやら二人は、今年新調するなまえちゃんの水着について話しているらしかった。
「確か今年の水着はセクシーな物にしてくれるんだったね。マイクロビキニとかかい? いやぁ、なまえの水着姿、楽しみだなぁ」
「私そんな事言った⁉︎ 色っぽいとか大人っぽいのにするとかは言った気がするけど……え? ていうかマーリン、マイクロビキニ好きなの?」
「そりゃあ大好きだとも。何の意味も無い卑猥なだけの水着……うん、実に素晴らしいデザインだと思うよ」
「ふ、ふーん……好きなんだ……。いや流石に着ないけどね? マイクロビキニ……ふーん」
などと言う会話を聞いたオレは、反射的に脳内でマーなまえマイクロビキニ羞恥責め大作エロ漫画のネームを切っていた。
そこからの食事の味や仕事の内容はハッキリ言って覚えていない。とにかく早く漫画を描きたくて気が狂いそうだった。そして業務終了後から無我夢中で作業をし、今に至るという訳だ。
淹れたばかりの温かいコーヒーを一口飲んで、ふうっと息を吐いたオレは休憩がてらSNSを開いた。
せっかくだからこの新作の進捗でも載せとくか、と思い付き、なまえちゃんがマイクロビキニの上から素股されているシーンを『新作wip』とツイートする。すると即座にDMの通知が飛んできて、オレは「まさかな……」と手を震えさせた。
届いたメッセージには『大変素晴らしい作品を執筆中との事、ありがとうございます。今回もなまえの愛らしさがよく表現されていると思います。もしよろしければこちらの作品を次回サバフェスにて新刊として委託、頒布するのはいかがでしょうか? 詳細は──』と内容が続いている。
いや、これまた本人じゃん。竿役の方の本人じゃん。ていうか新刊? 新刊か……それもいいかもな……なんて返事を考えていると、もう一件メッセージが届いた。
恐る恐るもう一件のメッセージを開くと、『新作のマイクロビキニエロ漫画、とっても楽しみです。今回も作画がすごく良くてさすがと言わざるを得ません。この続きは……』とまたもやもう一人の方の本人からのメッセージだった。
こんなことある? マーリンもなまえちゃんもオレのフォロワーなのか? と天を仰ぎながらも、気がつけばオレは『今の新作、本にします』とツイートしていた。ファンからのうれしいメッセージには応えたくなっちゃうよな……。やれやれ、マーなまえマイクロビキニ羞恥責めエロ漫画本、描いちゃいますか!